No.542

2021.12.21

撮影した複数枚の写真から対象物を3D計測

サイズ計測AI

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概要

「サイズ計測AI」とは、ズームレンズを用いた単眼カメラ(一眼レフカメラ)で撮影した複数枚の写真から、対象部分の長さや面積、体積などのサイズを3D計測できるAI技術。異なる位置から撮影された複数の写真(多視点画像)から割り出された相対的な奥行き情報と、画像に含まれるボケ情報とを組み合わせることで、単眼カメラから対象部分のサイズ計測が可能になる。道路、橋、トンネルなど老朽化が進む様々な社会インフラの保全に使用が見込まれているほか、ロボットやドローンと併用することで、高所や斜面など接近困難な箇所のサイズ測定も可能になる。また、インフラ点検以外にも、製造や物流、医療など、カメラを使用してサイズ計測する様々な場面に本技術を応用する展望が見据えられている。

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なぜできるのか?

「単眼SfM」と「レンズ収差AI」

本技術のルーツには、「単眼SfM(Structure from Motion)」と「レンズ収差AI」という技術がある。「単眼SfM」は視点位置の異なる撮影画像の見え方の違いを元に、単眼カメラの多視点画像から3次元形状を復元する技術で、スマートフォンのサイズ計測アプリにも使用されている。もう一方の「レンズ収差AI」は、深層学習でレンズの収差(撮影レンズで発生する色のにじみや像の歪み)の変化を検出して、1枚の撮影画像から奥行きを取得し、サイズ計測を可能にする技術である。

2つの技術の組み合わせにより遠距離の測定を実現

「サイズ計測AI」による測定には「単眼SfM」を用いることで得られる奥行き情報と、「レンズ収差AI」による撮影画像のボケ情報が一致するスケールを求めることで、撮影画像からサイズの絶対値を得る。実験では近距離(1.5m)でも遠距離(7m)でも変わらず高い精度でサイズを計測できたほか、ズームレンズを使用した難しい条件下でもサイズ誤差を3.8%に抑えることに成功した。この精度は2mm以下の細かいひびのサイズ計測にも妥当な計測結果が得られることが確認されている。

様々な場面での活用に期待

今後は、スマートフォンや産業用カメラ、ロボット、ドローンなどと併用し、さまざまなレンズと単眼カメラを用いた実証を進めるとともに、老朽化が進むインフラの保全作業を効率化する保守点検アプリケーションやシステムへの組み込みを検討している。AIの規模や処理の負荷はスマートフォンに組み込めるレベルであり、最適化を進めればエッジAIとしてカメラ機器に組み込むことも可能だ。また、製造や物流、医療など、カメラを使用したサイズ計測の場面でも本技術を応用することができる。

相性のいい産業分野

住宅・不動産・建築

建物の高所にある計測困難な部分のひびのサイズを高精度に計測

官公庁・自治体

道路や鉄道など公共施設のインフラに入る亀裂のサイズを画像から計測

流通・モビリティ

複数の画像から貨物のサイズを計測

ロボティクス

ドローンやロボットと併用することで人間の立ち入ることができない場所の点検に活用

農業・林業・水産業

海や養殖場の魚のサイズを撮影画像や映像から高精度に測定

航空・宇宙

複数の衛星から撮影することで天体の正確なサイズを計測

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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